実績・事例と専門知識

直近合意時点と価格時点の間に行政区域の変化がある場合の継続地代の評価

【事案】地代が設定されている土地の行政上の規制が周辺の開発により市街化調整区域から市街化区域へ変更となり、当初の地代が不相応になったため、継続地代の算定について依頼を受けました。


【論点】行政上の規制が変わったことにより、開発にあたっての規制や土地取引価格の相場について大きな影響を与えられており、継続地代の算定にあたってはこれら「事情変更に係る要因」について適切に反映することが必要です。差額配分法、利回り法及びスライド法を適用のうえ各試算価格を得たが、差額配分法及び利回り法による地代は大幅に増額(60%増)となりましたが、スライド法については現行地代からの増額幅がかなり小さい結果(約15%増)となりました。


【対応】スライド法で用いる変動率についてはマクロ的な各インデックスをそれぞれの有する性格等に留意のうえ調整を行っており、直近合意時点から価格時点までの一般的な経済情勢等の変化を適切に反映し、客観性に基づくものといえますが、一方で対象地の行政的な規制の変化や取引相場の変化を反映させることは困難であるため、スライド法から求められた試算地代については参考にとどめました。

適用する手法から得られる各試算賃料について階差が出るときもありますが、各試算賃料の算出過程における特性について把握、分析のうえ、適正に最終の鑑定評価額へ反映することが大切です。

この記事を書いた人

酒井 龍太郎

アゲハ総合鑑定株式会社 代表取締役

大学在学中の2005年に不動産鑑定士試験に合格。2007年3月 神戸大学法学部卒業。同年4月 住友信託銀行(現三井住友信託銀行)へ入行し、退職する2015年まで不動産に関する実務に携わる。2017年3月 不動産鑑定士登録。調停・訴訟に特化した不動産鑑定士として、弁護士との協業実績多数。

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