実績・事例と専門知識

賃料増額請求訴訟における重要判例②

最高裁大法廷平成13年3月28日判決(平成8(オ)232)

本件は、賃貸人が賃借人に対して賃料の増額を請求した事案です。最高裁は、借地借家法32条の賃料増減額請求権の要件である「相当の額」の判断基準について、以下のように述べました。 「相当の額」とは、賃料額が、土地または建物に関する租税その他の負担の増減、土地または建物の価格の上昇もしくは低下その他の経済事情の変動に照らし、不相当となったか否かを判断する基準です。そして、賃料額の相当性の判断に当たっては、これらの事情の変動を総合的に考慮し、賃料額が、当該賃貸借契約における当事者の協議により定められたものであるか否か、その後の賃料の改定の有無及びその態様等をも勘案して判断すべきです。 また、最高裁は、賃料額の相当性の判断に当たっては、賃貸人と賃借人の利益の調整を図ることが重要であると指摘しました。

賃料額の相当性の判断は、賃貸人の利益と賃借人の利益を比較衡量し、双方の利益の均衡を図ることを目的として行われるべきであり、賃貸人の利益のみを重視して賃料額を決定することは許されません。 本判決は、賃料増減額請求権の行使要件である「相当の額」の判断基準を明確にし、賃料の相当性判断に当たっての考慮要素を示した点で、不動産鑑定実務に重要な指針を提供した判例といえます。

不動産鑑定評価においては、賃料の相当性を判断する際に、土地または建物に関する租税その他の負担の増減、土地または建物の価格の上昇もしくは低下その他の経済事情の変動を総合的に考慮するとともに、賃料額が当事者の協議により定められたものであるか否か、その後の賃料の改定の有無及びその態様等をも勘案する必要があります。 また、本判決は、賃料の相当性判断に当たっては、賃貸人と賃借人の利益の調整を図ることが重要であることを指摘した点でも重要です。不動産鑑定評価においては、賃料の相当性を判断する際に、賃貸人の利益と賃借人の利益を比較衡量し、双方の利益の均衡を図ることを目的として行われるべきであり、賃貸人の利益のみを重視して賃料額を決定することは適切ではありません。

本判決は、不動産鑑定評価における賃料の相当性判断の基準と考慮要素を明確にし、賃貸人と賃借人の利益調整の重要性を指摘した点で、不動産鑑定実務に重要な指針を提供したものといえます。

この記事を書いた人

酒井 龍太郎

アゲハ総合鑑定株式会社 代表取締役

大学在学中の2005年に不動産鑑定士試験に合格。2007年3月 神戸大学法学部卒業。同年4月 住友信託銀行(現三井住友信託銀行)へ入行し、退職する2015年まで不動産に関する実務に携わる。2017年3月 不動産鑑定士登録。調停・訴訟に特化した不動産鑑定士として、弁護士との協業実績多数。

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