賃料増額請求訴訟における重要判例③
最高裁第三小法廷平成25年1月22日判決(平成23(受)2229)
本件は、賃借人が賃貸人に対して賃料の減額を請求した事案です。最高裁は、賃料減額請求の判断に当たっては、賃借人の収益状況を考慮することが必要であると述べました。 賃借人の収益状況は、賃料減額請求の判断に当たって考慮すべき重要な要素の一つです。賃借人の収益状況が悪化している場合には、賃料負担が賃借人にとって過大なものとなっている可能性があり、賃料減額請求が認められる余地があります。他方で、賃借人の収益状況が良好である場合には、現行の賃料水準が賃借人にとって適正なものであると評価できる可能性があり、賃料減額請求が認められない場合があります。 ただし、最高裁は、賃借人の収益状況の悪化が、賃借人の経営努力の不足や賃借人の事情によるものである場合には、賃料減額請求が認められない場合があることも指摘しました。賃借人の収益状況の悪化が、賃借人の責めに帰すべき事由によるものである場合には、賃料減額請求が認められないことがあります。
本判決は、賃料減額請求における賃借人の収益状況の考慮方法に関する考え方を示した点で、不動産鑑定実務に重要な示唆を与えた判例といえます。不動産鑑定評価においては、賃料の減額の適否を判断する際に、賃借人の収益状況を考慮する必要があります。賃借人の収益状況が悪化している場合には、賃料減額の可能性を検討する必要がありますが、その際には、賃借人の収益状況の悪化が賃借人の責めに帰すべき事由によるものであるか否かを慎重に判断する必要があります。 また、本判決は、賃料減額請求の判断に当たっては、賃借人の収益状況のみならず、賃貸借契約の経緯や賃料の改定状況等の諸般の事情を総合的に考慮する必要があることも指摘しています。 不動産鑑定評価においては、賃料の減額の適否を判断する際に、賃借人の収益状況のみならず、賃貸借契約の経緯や賃料の改定状況等の諸般の事情を総合的に考慮する必要があります。 本判決は、不動産鑑定評価における賃料減額の適否の判断基準と考慮要素を明確にした点で、不動産鑑定実務に重要な指針を提供したものといえます。
大学在学中の2005年に不動産鑑定士試験に合格。2007年3月 神戸大学法学部卒業。同年4月 住友信託銀行(現三井住友信託銀行)へ入行し、退職する2015年まで不動産に関する実務に携わる。2017年3月 不動産鑑定士登録。調停・訴訟に特化した不動産鑑定士として、弁護士との協業実績多数。