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賃料増額請求訴訟における重要判例⑤

最高裁第二小法廷平成20年2月29日判決(平成18(受)192)

本件は、賃借人が賃貸人に対して賃料の減額を請求した事案です。最高裁は、賃料減額請求の判断に当たっては、賃貸人と賃借人の利益の調整を図ることが重要であると述べました。 賃料減額請求が認められるか否かは、賃貸人の利益と賃借人の利益を比較衡量して判断すべきです。賃貸人の利益としては、賃料収入の減少による経済的不利益等が考慮され、賃借人の利益としては、賃料負担の軽減による経済的利益等が考慮されます。裁判所は、これらの利益を比較衡量し、賃料減額請求の当否を判断する必要があります。

最高裁は、賃料減額請求の判断に当たっては、賃貸人と賃借人の利益の調整を図ることが重要であることを指摘するとともに、賃料減額請求が認められるためには、賃借人の利益が賃貸人の利益に優越することが必要であると判示しました。賃借人の利益が賃貸人の利益に優越するか否かは、賃料の額、賃貸借契約の経緯、賃料の改定状況、賃貸人と賃借人の経済状況等の諸般の事情を総合的に考慮して判断する必要があります。

本判決は、賃料増減額請求権の行使における賃貸人と賃借人の利益調整の必要性を強調した点で、不動産鑑定実務に重要な示唆を与えた判例といえます。不動産鑑定評価においては、賃料の減額の適否を判断する際に、賃貸人の利益と賃借人の利益を比較衡量し、双方の利益の均衡を図ることを目的として行われるべきであり、賃借人の利益のみを重視して賃料額を決定することは適切ではありません。 また、本判決は、賃料減額請求が認められるためには、賃借人の利益が賃貸人の利益に優越することが必要であることを指摘した点でも重要です。

不動産鑑定評価においては、賃料の減額の適否を判断する際に、賃借人の利益が賃貸人の利益に優越するか否かを慎重に判断する必要があります。賃借人の利益が賃貸人の利益に優越するか否かは、賃料の額、賃貸借契約の経緯、賃料の改定状況、賃貸人と賃借人の経済状況等の諸般の事情を総合的に考慮して判断する必要があります。 本判決は、不動産鑑定評価における賃料減額の適否の判断基準と考慮要素を明確にし、賃貸人と賃借人の利益調整の重要性を指摘した点で、不動産鑑定実務に重要な指針を提供したものといえます。

この記事を書いた人

酒井 龍太郎

アゲハ総合鑑定株式会社 代表取締役

大学在学中の2005年に不動産鑑定士試験に合格。2007年3月 神戸大学法学部卒業。同年4月 住友信託銀行(現三井住友信託銀行)へ入行し、退職する2015年まで不動産に関する実務に携わる。2017年3月 不動産鑑定士登録。調停・訴訟に特化した不動産鑑定士として、弁護士との協業実績多数。

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