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賃料増額請求訴訟における重要判例⑧

甲府地裁平成16年4月27日判決(平成12(ワ)472)

本件は、賃借人が賃貸人に対して賃料の減額を請求した事案です。

裁判所は、借地借家法32条の要件である「土地又は建物に関する租税その他の負担の増減」の解釈について、次のように述べました。 「土地又は建物に関する租税その他の負担の増減」とは、土地又は建物に関する固定資産税、都市計画税、登録免許税等の租税の増減のほか、土地又は建物に関する保険料、管理費、修繕費等の負担の増減をも含むと解するのが相当です。したがって、賃料減額請求の判断に当たっては、これらの租税その他の負担の増減を考慮する必要があります。

裁判所は、借地借家法32条の要件である「土地又は建物に関する租税その他の負担の増減」には、租税の増減のみならず、保険料、管理費、修繕費等の負担の増減も含まれることを明らかにしました。そして、賃料減額請求の判断に当たっては、これらの負担の増減を考慮する必要があると判示しました。 本判決は、借地借家法32条の要件である「土地又は建物に関する租税その他の負担の増減」の解釈を明確にした点で、不動産鑑定実務に重要な示唆を与えた判例といえます。

不動産鑑定評価においては、賃料の減額の適否を判断する際に、土地又は建物に関する租税その他の負担の増減を考慮する必要があります。その際には、租税の増減のみならず、保険料、管理費、修繕費等の負担の増減も考慮する必要があります。 また、本判決は、賃料減額請求の判断に当たっては、賃貸人と賃借人の利益の調整を図ることが重要であることも指摘しています。

不動産鑑定評価においては、賃料の減額の適否を判断する際に、賃貸人の利益と賃借人の利益を比較衡量し、双方の利益の均衡を図ることを目的として行われるべきであり、賃借人の利益のみを重視して賃料額を決定することは適切ではありません。 本判決は、不動産鑑定評価における賃料減額の適否の判断基準と考慮要素を明確にし、賃貸人と賃借人の利益調整の重要性を指摘した点で、不動産鑑定実務に重要な指針を提供したものといえます。

この記事を書いた人

酒井 龍太郎

アゲハ総合鑑定株式会社 代表取締役

大学在学中の2005年に不動産鑑定士試験に合格。2007年3月 神戸大学法学部卒業。同年4月 住友信託銀行(現三井住友信託銀行)へ入行し、退職する2015年まで不動産に関する実務に携わる。2017年3月 不動産鑑定士登録。調停・訴訟に特化した不動産鑑定士として、弁護士との協業実績多数。

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