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賃料増額請求訴訟における重要判例⑨

最高裁第一小法廷昭和47年3月30日判決(昭和45(オ)598)

本件は、賃貸人が賃借人に対して賃料の増額を請求した事案です。

最高裁は、賃料増額請求における賃料の相当性判断について、次のように述べました。 賃料の相当性の判断に当たっては、当該建物の位置、構造、規模、設備等の状況、賃料の額、契約の経緯等の諸般の事情を総合的に考慮して判断すべきであり、当該建物と類似の建物の賃料と比較するだけでは足りません。また、賃料の相当性の判断に当たっては、賃貸人の利益と賃借人の利益を比較衡量して判断すべきであり、賃貸人の利益のみを重視するのは相当ではありません。

最高裁は、賃料の相当性の判断に当たっては、建物の状況、賃料の額、契約の経緯等の諸般の事情を総合的に考慮すべきであることを指摘するとともに、類似建物の賃料との比較のみでは十分ではないと判示しました。また、賃料の相当性の判断に当たっては、賃貸人と賃借人の利益を比較衡量すべきであり、賃貸人の利益のみを重視するのは相当ではないとも判示しました。

本判決は、賃料増額請求における賃料の相当性判断に関する先駆的な判断を示した点で、不動産鑑定実務に重要な示唆を与えた判例といえます。不動産鑑定評価においては、賃料の相当性を判断する際に、建物の状況、賃料の額、契約の経緯等の諸般の事情を総合的に考慮する必要があります。また、類似建物の賃料との比較のみでは十分ではなく、賃貸人と賃借人の利益を比較衡量することが重要です。 本判決は、賃料の相当性判断における考慮要素と判断基準を明確にした点で、

不動産鑑定実務に重要な指針を提供したものといえます。不動産鑑定士は、賃料の相当性を判断する際には、本判決の趣旨を踏まえ、建物の状況、賃料の額、契約の経緯等の諸般の事情を総合的に考慮するとともに、賃貸人と賃借人の利益の調整を図ることが求められます。

この記事を書いた人

酒井 龍太郎

アゲハ総合鑑定株式会社 代表取締役

大学在学中の2005年に不動産鑑定士試験に合格。2007年3月 神戸大学法学部卒業。同年4月 住友信託銀行(現三井住友信託銀行)へ入行し、退職する2015年まで不動産に関する実務に携わる。2017年3月 不動産鑑定士登録。調停・訴訟に特化した不動産鑑定士として、弁護士との協業実績多数。

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