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賃料増額請求訴訟における重要判例⑩

最高裁第一小法廷平成17年3月10日判決(平成14(受)1954)

本件は、賃貸人が賃借人に対して賃料の増額を請求した事案です。

最高裁は、賃料増額請求における賃料の相当性判断について、次のように述べました。 賃料の相当性の判断に当たっては、賃料額が、土地又は建物に関する租税その他の負担の増減、土地又は建物の価格の上昇又は低下その他の経済事情の変動に照らし、不相当となったか否かを判断すべきであり、その判断に当たっては、これらの事情の変動を総合的に考慮し、賃料額が、当該賃貸借契約における当事者の協議により定められたものであるか否か、その後の賃料の改定の有無及びその態様等をも勘案して判断すべきです。また、賃料の相当性の判断に当たっては、賃貸人と賃借人の利益の調整を図ることが重要であり、賃貸人の利益と賃借人の利益を比較衡量して判断すべきです。

最高裁は、賃料の相当性の判断に当たっては、土地又は建物に関する租税その他の負担の増減、土地又は建物の価格の上昇又は低下その他の経済事情の変動を総合的に考慮すべきであることを指摘するとともに、当該賃貸借契約における当事者の協議の経緯や賃料改定の状況等も勘案すべきであると判示しました。また、賃料の相当性の判断に当たっては、賃貸人と賃借人の利益の調整を図ることが重要であり、両者の利益を比較衡量すべきであるとも判示しました。

本判決は、賃料増額請求における賃料の相当性判断に関する最高裁の考え方を明確にした点で、不動産鑑定実務に重要な指針を提供した判例といえます。不動産鑑定評価においては、賃料の相当性を判断する際に、土地又は建物に関する租税その他の負担の増減、土地又は建物の価格の上昇又は低下その他の経済事情の変動を総合的に考慮する必要があります。また、当該賃貸借契約における当事者の協議の経緯や賃料改定の状況等も勘案することが重要です。 さらに、本判決は、賃料の相当性の判断に当たっては、賃貸人と賃借人の利益の調整を図ることが重要であることを指摘した点でも重要です。

不動産鑑定評価においては、賃料の相当性を判断する際に、賃貸人の利益と賃借人の利益を比較衡量し、両者の利益の均衡を図ることを目的として行われるべきであり、賃貸人の利益のみを重視して賃料額を決定することは適切ではありません。 本判決は、不動産鑑定評価における賃料の相当性判断の基準と考慮要素を明確にし、賃貸人と賃借人の利益調整の重要性を指摘した点で、不動産鑑定実務に重要な指針を提供したものといえます。不動産鑑定士は、賃料の相当性を判断する際には、本判決の趣旨を踏まえ、土地又は建物に関する租税その他の負担の増減、土地又は建物の価格の上昇又は低下その他の経済事情の変動を総合的に考慮するとともに、当該賃貸借契約における当事者の協議の経緯や賃料改定の状況等も勘案し、賃貸人と賃借人の利益の調整を図ることが求められます。

この記事を書いた人

酒井 龍太郎

アゲハ総合鑑定株式会社 代表取締役

大学在学中の2005年に不動産鑑定士試験に合格。2007年3月 神戸大学法学部卒業。同年4月 住友信託銀行(現三井住友信託銀行)へ入行し、退職する2015年まで不動産に関する実務に携わる。2017年3月 不動産鑑定士登録。調停・訴訟に特化した不動産鑑定士として、弁護士との協業実績多数。

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