「賃料増額訴訟における鑑定評価の重要性と活用方法」
賃料増額訴訟において、不動産鑑定評価は極めて重要な役割を果たします。裁判所は、適正賃料の判断に際し、専門家による客観的な評価を重視するためです。適切な鑑定評価の活用は、訴訟の成功率を大きく左右する要素となります。
鑑定評価の活用方法は、大きく分けて訴訟前と訴訟時の二段階があります。
訴訟前の交渉段階では、鑑定評価を取得することで増額の根拠を明確にできます。これにより、相手方との交渉が有利に進む可能性が高まります。また、鑑定結果を基に適切な増額幅を設定することで、無理のない主張が可能となります。
訴訟時には、鑑定書を重要な証拠として提出し、主張の裏付けとします。裁判所は、専門家による客観的な評価を重視するため、説得力のある鑑定書は極めて有効です。
鑑定評価では、主に差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法などの手法が用いられます。近年の判例では、これらを組み合わせた総合的な評価が好まれる傾向にあります。特に、差額配分法とスライド法の併用が多く見られます。
弁護士は、鑑定人の選定や鑑定事項の特定において、事案の特性を十分に考慮する必要があります。対象不動産の特徴、賃貸借の経緯、地域の特性などを鑑定人に適切に伝えることが重要です。
また、相手方の鑑定評価に対する反論の準備も重要です。相手方の鑑定評価の手法や前提条件を精査し、問題点があれば指摘できるよう準備します。必要に応じて、反証のための別の鑑定評価を用意することも検討します。
鑑定評価の結果を効果的に活用するためには、裁判所に分かりやすく説明することが重要です。複雑な計算過程や専門用語を、裁判官にも理解しやすいように噛み砕いて説明する能力が求められます。
大学在学中の2005年に不動産鑑定士試験に合格。2007年3月 神戸大学法学部卒業。同年4月 住友信託銀行(現三井住友信託銀行)へ入行し、退職する2015年まで不動産に関する実務に携わる。2017年3月 不動産鑑定士登録。調停・訴訟に特化した不動産鑑定士として、弁護士との協業実績多数。