『若手弁護士のための賃料増額実務シリーズ 第1回 賃料増額請求の基礎と増額可能性の判断』
賃料増額請求の相談を受けたとき、まず何をチェックすべきでしょうか。 本シリーズでは、賃料増額請求の実務において重要なポイントを、具体的な事例を交えながら解説していきます。
■増額請求の基礎知識
賃料増額請求は、経済事情の変動により、賃料が不相当となったときに行うことができます(借地借家法32条1項)。しかし、実務上は「経済事情の変動」をどのように判断し、依頼者に説明すべきかが重要になります。
■増額可能性の判断ポイント 実務上、以下の要素を総合的に検討することが重要です:
1. 経済事情の変動 – 物価の上昇、周辺の賃料相場の変動、地価の変動 (これらの要素は、依頼者への説明材料として重要です。)
2. 最近の賃料合意からの期間 賃料の合意から相当期間が経過していることが必要です。ただし、「相当期間」は物件の特性や経済状況により異なります。
3. 立地環境の変化 再開発や新規交通インフラの整備など、収益性に影響を与える要因を検討します。
■具体的な事例から学ぶ
【事例1】オフィスの例
物件概要 – 規模:50坪程度 – 立地:市内中心部の駅近ビルの上層フロア – 用途:オフィス
・増額検討のきっかけ -オフィスの周辺賃料相場の上昇、直近合意から11年経過
・評価のポイント 1.周辺の賃料相場との乖離と当初契約時期 2. オフィスとしての立地優位性3. 市場環境 -エリアの土地相場の上昇及び賃料水準の上昇
【事例2】商業店舗の例
物件概要 – 規模:200坪程度 – 立地:乗降客が多い駅近隣のビル1階 – 用途:物販店舗
・増額検討のきっかけ – インバウンド需要回復及び周辺賃料相場の上昇、直近合意から6年経過
・評価のポイント 1.周辺の新規出店状況と店舗の売上回復 – 2. 店舗としての優位性やエリアでの希少性 3. 市場環境 -エリアの土地相場の上昇及び賃料水準の上昇
■実務上の留意点
1. 依頼者からのヒアリング項目 – 賃料改定の経緯、賃貸借契約書の内容、物件の現況、借主とのこれまでの関係
2. 資料の収集 – 賃貸借契約書、賃料改定の経緯を示す資料、周辺相場に関する資料
3. 増額の意思決定 – 借主との関係性も考慮しつつ、増額請求の是非を判断することが重要です。
■適切な鑑定評価の重要性 増額請求では、適切な鑑定評価が重要な証拠となります。特に以下の点に注意が必要です:
①直近の賃料合意時期の確認、②周辺相場の適切な分析、③個別性の考慮
当社では、これまで多くの賃料増額案件の鑑定評価を手がけてきました。特に(具体的な実績を記載)などの実績があります。
次回は「継続賃料の基礎知識」について解説します。
【お問合せ】賃料増額請求に関する鑑定評価について、お気軽にご相談ください。
電話:06-6195-6537 メール:r-sakai@ageha-kantei.jp

大学在学中の2005年に不動産鑑定士試験に合格。2007年3月 神戸大学法学部卒業。同年4月 住友信託銀行(現三井住友信託銀行)へ入行し、退職する2015年まで不動産に関する実務に携わる。2017年3月 不動産鑑定士登録。調停・訴訟に特化した不動産鑑定士として、弁護士との協業実績多数。