駅近一等地における大規模店舗区画の賃料適正化事例
相談の経緯と内容
某中心部の駅近ビルオーナー様より、1階テナント区画に関するご相談がありました。当該区画は本来ビル内で最も収益性が高いはずの1階店舗スペースでありながら、長期間にわたり賃料改定がなされず、周辺相場と比較して著しく低廉な賃料水準のまま据え置かれていました。オーナー様は適正な賃料水準への是正を通じて、当該区画の収益性向上はもとより、ビル全体の資産価値向上を図りたいとのことでした。当該区画は駅至近の好立地に位置するまとまった広さを持つ1階店舗区画であり、希少性の高い物件でした。
鑑定士の対応
当該案件に対し、以下のアプローチで鑑定評価を実施しました。
1. 周辺エリアの店舗賃料相場調査
2. 同一商圏内における類似規模店舗区画の賃料事例収集
3. 当該区画の希少性・優位性の定量的分析
4. 最有効使用の観点からの潜在的需要者層の検討
特に、同一商圏内の類似規模区画の事例については、単純な面積単価比較だけでなく、視認性や人流量なども加味した総合的な分析を行いました。
評価のポイント
本件における評価の最大のポイントは、「希少性プレミアム」の適正な数値化でした。周辺の一般的な店舗賃料相場はそれほど高くない水準でしたが、当該区画の持つ以下の特性が高い付加価値を生み出していると判断しました。
1. 駅至近という立地特性
2. まとまった面積を有する1階区画としての希少性
3. 特定業種(飲食・物販等)にとっての戦略的価値
これらの要素を総合的に勘案した結果、周辺相場を考慮しつつも、大規模区画としての希少性価値を適切に数値化し、当初想定していた賃料水準を大幅に上回る鑑定評価額を導き出すことができました。特定業種における競合テナントであれば、周辺相場を超える賃料でも十分に経済合理性が成立すると判断したことが、適正かつ高水準な賃料評価につながりました。

大学在学中の2005年に不動産鑑定士試験に合格。2007年3月 神戸大学法学部卒業。同年4月 住友信託銀行(現三井住友信託銀行)へ入行し、退職する2015年まで不動産に関する実務に携わる。2017年3月 不動産鑑定士登録。調停・訴訟に特化した不動産鑑定士として、弁護士との協業実績多数。