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継続賃料と新規賃料の違い ~地主が知るべき重要なポイント~

地主の皆様から賃料評価のご相談をいただく際、「継続賃料」と「新規賃料」の違いを正しく理解しておくことは非常に重要です。

この2つの違いを知ることで、より適切な賃料設定と収益の最大化が可能になります。

最近、この類のご相談が多いので改めてまとめてみました。

継続賃料とは

継続賃料とは、既存の賃貸借契約が継続している状況で評価される賃料のことです。現在の契約関係を前提として、適正な賃料水準を算定します。

継続賃料の特徴

・現行契約の内容に大きく左右される

・急激な賃料変動は認められにくい

・借主の経済的負担能力も考慮される

・段階的な調整が基本となる

継続賃料の限界

継続賃料では、現状の賃料が市場相場より大幅に低い場合でも、一度に相場水準まで引き上げることは困難です。これは、既存の契約関係や借主との継続的な関係性を重視するためです。

新規賃料とは

新規賃料とは、新たな賃貸借契約を結ぶ際に設定される賃料です。

定期借地権や定期建物賃貸借契約の満了時も、新規契約として扱われます。

新規賃料の特徴

・市場の実勢相場を反映できる

・立地や物件価値を適正に評価

・契約条件を一から見直し可能

・大幅な賃料アップが期待できる

定期契約満了時が大きなチャンス

定期借地権や定期建物賃貸借契約では、契約期間満了時に必ず契約が終了します。継続を希望する場合は、新たに契約を締結する必要があり、この時点で「新規賃料」として評価されます。

なぜ大幅アップが可能なのか

1. 契約の継続性がなく既存契約に拘束されない。つまり市場相場を基準に設定可能

2. 対等な交渉関係にあり、新規契約として双方が対等な立場となる。 借主も市場相場での契約を理解している。

地主様へのアドバイス

継続賃料での対応時

・段階的な調整を計画する

・借主との良好な関係を維持しつつ交渉

・専門家による適正な評価が重要

定期契約満了時

・市場相場の十分な調査を実施

・新規賃料での評価を積極的に活用

・契約条件全体の見直しを検討

まとめ

継続賃料では現行契約の制約により大幅な賃料アップは困難ですが、定期契約の満了時は新規賃料として市場相場に基づいた適正な賃料設定が可能です。地主の皆様には、この違いを理解し、適切なタイミングで専門家にご相談いただくことで、より良い収益確保を実現していただきたいと思います。

賃料評価に関するご相談は、契約の性質と評価のタイミングを十分に考慮して進めることが成功の鍵となります。

この記事を書いた人

酒井 龍太郎

アゲハ総合鑑定株式会社 代表取締役

大学在学中の2005年に不動産鑑定士試験に合格。2007年3月 神戸大学法学部卒業。同年4月 住友信託銀行(現三井住友信託銀行)へ入行し、退職する2015年まで不動産に関する実務に携わる。2017年3月 不動産鑑定士登録。調停・訴訟に特化した不動産鑑定士として、弁護士との協業実績多数。

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