差額配分法とスライド法:裁判所が重視する継続賃料の算定方法
賃料増額請求訴訟において、継続賃料の算定方法は非常に重要な要素とされています。特に、差額配分法とスライド法は、裁判所が重視する主要な算定方法と言われています。
差額配分法は、現行の賃料と適正な賃料(多くの場合、近隣の新規賃料)との差額を、賃貸人と賃借人で分配する方法とされています。この方法は、市場の実勢を反映しやすいという特徴があると考えられています。一方で、賃料の急激な変動を緩和する効果もあるとされています。
スライド法は、従前の賃料に一定の変動率(物価指数や地価変動率など)を乗じて新しい賃料を算出する方法だと言われています。この方法は、経済指標の変動を直接反映させやすく、計算が比較的簡単であるという利点があると考えられています。
近年の判例では、これら二つの方法を併用し、それぞれに一定の割合を設定して最終的な賃料を算定する傾向が見られるとされています。例えば、差額配分法を70%、スライド法を30%といった具合に配分するケースが多いと言われています。
裁判所がこれらの方法を重視する理由としては、以下のような点が挙げられています:
- 市場の実勢を反映しつつ、急激な変動を避けられる
- 客観的な指標を用いることで、恣意性を排除できる
- 賃貸人と賃借人双方の利益を考慮できる
弊社も、この最近の判例の傾向に則り、差額配分法とスライド法について2:1の割合で採用するケースが多くなっております。 ただし、これらの方法の適用や配分割合は、個々の事案の特性によって異なると言われています。例えば、賃貸借契約の継続期間、対象不動産の種類や立地、経済状況の変化の度合いなどが考慮されるとされています。
大学在学中の2005年に不動産鑑定士試験に合格。2007年3月 神戸大学法学部卒業。同年4月 住友信託銀行(現三井住友信託銀行)へ入行し、退職する2015年まで不動産に関する実務に携わる。2017年3月 不動産鑑定士登録。調停・訴訟に特化した不動産鑑定士として、弁護士との協業実績多数。