オフィスビルの賃料増額訴訟:成功事例と失敗事例の分析
オフィスビルの賃料増額訴訟は、不動産市況の変動や経済環境の変化に敏感に反応する分野だと言われています。成功事例と失敗事例を分析することで、効果的な訴訟戦略を立てる上で有用な知見が得られると考えられています。
成功事例の特徴としては、以下のような点が挙げられることが多いようです:
- 経済指標の効果的な活用 地価の上昇、オフィス需要の増加、周辺賃料の上昇など、客観的な経済指標を効果的に提示できた事例が多いとされています。
- 適切な増額幅の設定 過大な増額要求ではなく、合理的で説得力のある増額幅を提示した事例が成功しやすいと言われています。
- 不動産鑑定評価の適切な活用 信頼性の高い不動産鑑定評価を取得し、その内容を効果的に主張に組み込んだ事例が多いとされています。
- 建物の価値向上の立証 改修工事や設備更新により、オフィスビルの価値が向上したことを具体的に示せた事例が成功しやすいと考えられています。
一方、失敗事例の特徴としては、以下のような点が指摘されることが多いようです:
- 経済事情の変動の立証不足 賃料増額の必要性を裏付ける経済事情の変動を十分に立証できなかった事例が多いとされています。
- 過大な増額要求 市場の実勢から乖離した過大な増額を要求し、裁判所の理解を得られなかった事例が見られると言われています。
- 賃借人の事情への配慮不足 賃借人の営業状況や支払能力を考慮せず、一方的な増額を主張した事例が失敗しやすいとされています。
また、特に差額配分法においては十分増額の余地がある一方、スライド法において採用する各種指標が直近合意時点から価格時点までの間では上昇率を見出せない場合があります。例えばリーマンショック直後において大幅に家賃を下げてテナントを入居させた場合、当時の経済指標はまだ下がり始める手前だったためにそれなりの経済水準であり、価格時点におけるそれと比較してあまり上昇していない(リーマンショック後経済指標が下がりきった時点が直近合意時点であればそこからの上昇率はかなり見込める)ので、スライド法ではあまり賃料増額が見込めないケースがあります。
そのため直近合意時点がいつであるかについても非常に大切な論点になり、この時点の違いによって導かれる試算が大きく異なることになります。
弊社ではどれくらいの賃料増額が見込まれるかについての試算(概算)については無料にて対応させていただきます。
大学在学中の2005年に不動産鑑定士試験に合格。2007年3月 神戸大学法学部卒業。同年4月 住友信託銀行(現三井住友信託銀行)へ入行し、退職する2015年まで不動産に関する実務に携わる。2017年3月 不動産鑑定士登録。調停・訴訟に特化した不動産鑑定士として、弁護士との協業実績多数。