実績・事例と専門知識

交渉段階の簡易報告書から訴訟対応の正式鑑定へ|段階的な鑑定活用で費用を抑えた事例

はじめに

賃料増額交渉は、当初から訴訟を前提に進むとは限りません。まず交渉での解決を目指し、それが不調に終わった場合に調停・訴訟へ移行するというケースは実務上よくあるかと思われます。

こうした段階的な進め方に合わせて、鑑定評価も「簡易報告書からスタートし、必要に応じて正式鑑定へ移行する」という活用が可能です。本件はその典型的な事例です。

事案の概要

  • 物件: 大阪市内の店舗
  • 依頼者: 貸主側(弁護士経由)
  • 状況: 現行賃料がかなり低く抑えられており、賃料増額を求めたい
  • 当初の方針: まず交渉での解決を目指す

第一段階:交渉用の簡易調査報告書

当初は、弁護士が民民交渉の材料として使用するための簡易調査報告書を作成しました。

正式鑑定の1/4~1/3程度、具体的には15万円(税別)の費用で対応し、内容は以下の2手法を適用しました。

  • 差額配分法: 現在の新規賃料相場と現行賃料の差額を配分(客観的な市場実態の視点)
  • スライド法: 契約時からの経済指数の変動率を反映(主観的な継続性の視点)

この2手法により、主観・客観の両面から賃料増額の合理性を示す資料として納品しました。

第二段階:訴訟移行に伴う正式鑑定

納品から数ヶ月後、交渉が不調に終わり、本件が訴訟へ移行するとの連絡がありました。

訴訟では簡易調査報告書ではなく、正式な鑑定評価書が必要となります。そこで改めて正式鑑定のご依頼をいただきました。

費用については、すでにお支払いいただいた調査報告書の報酬を差し引いた追加分のみでご対応しました。新たに正式鑑定の費用をいただくのではないので、トータルの費用負担を結果的に抑えることができたと思われます。

正式鑑定では法定の全手法を適用しますが、評価額は当初の簡易報告書と同水準となりました。

段階的活用のメリット

当初から正式鑑定を取得する必要はありません。交渉で解決できれば簡易報告書のみで済み、費用を大幅に抑えられます。仮に訴訟に移行した場合も、追加費用だけで正式鑑定に切り替えられるため、二重払いになりません。

ご依頼者様にとってもいきなり正式鑑定の費用負担は大きなハードルかと思いますので、まずは継続賃料の水準の確認という観点からもこの簡易報告書の利用はメリットが大きいかと思われます。

実務上のポイント

結果の一貫性が重要 本件では簡易報告書と正式鑑定で同水準の評価額となりました。当初から一貫した評価根拠を持って対応していたため、訴訟移行後もスムーズに正式鑑定へ移行できると思われます。

交渉段階から鑑定士と連携する意義 交渉の初期段階から専門家の客観的な評価額を持つことで、相手方との交渉を有利に進めやすくなります。また、万一訴訟に移行した場合も、同じ鑑定士が継続して対応できるため、経緯の引き継ぎが不要です。

弁護士の先生方へ

賃料・地代案件では、以下のような段階的な活用をご提案しています。

  1. 交渉段階: 簡易調査報告書で費用を抑えながら根拠資料を準備
  2. 調停・訴訟移行時: 追加費用のみで正式鑑定評価書に切り替え

「まず交渉で様子を見たいが、根拠資料は欲しい」という段階からご相談いただけます。案件の進捗に合わせて柔軟に対応しますので、お気軽にご連絡ください。

📞 06-6195-6537(平日9:00〜17:00) ✉️ info@ageha-kantei.jp

この記事を書いた人

酒井 龍太郎

アゲハ総合鑑定株式会社 代表取締役

大学在学中の2005年に不動産鑑定士試験に合格。2007年3月 神戸大学法学部卒業。同年4月 住友信託銀行(現三井住友信託銀行)へ入行し、退職する2015年まで不動産に関する実務に携わる。2017年3月 不動産鑑定士登録。調停・訴訟に特化した不動産鑑定士として、弁護士との協業実績多数。

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